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全国裂織ニュース22号
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その山小屋は各国からのツーリストでにぎわうアイガー、メンヒ、ユングフラウ三山が真正面から迫る自国スイスの人々もうらやむ絶好の場、ラウターブルンネンLauterbrunnenの一角に、しかも観光ルートからはずれた標高1084mの山中。駅前からバスとケーブルに乗り換えて降り立った私たちに、“日本人が訪れたのは、あなた達が初めてよ”と、友人はウインクをして歓迎してくれる。 祖父母の代からの山小屋だというその小屋は、電気もガスも水道も無い、おまけにトイレも小屋の外。正真正銘の山小屋だった! 一応蛇口は小屋の前に引かれてはいるが、飲料には煮沸が必要。それは回りの緑豊かな牧草地帯が牛の放牧地のため。 山小屋に到着してからの仕事は、先ずは水汲み、薪割り、火起こし、湯沸しと始まり並行して寝具干しとなる。「シャワーする?」の声にうなずくと、タオルを絞って体を拭く仕草をしてみせる。「トイレは外よ」に出てみると、小屋の側面にへばりつくようにあった。座して扉を開ければ、あの三名山とご対面…!
なつかしやワンゲル時代… そのような環境に慣れるのに時間は掛からなかったが、やはりいささかの驚きとたじろぎがあったのも事実・・・ 雄大な山並みが連なる大パノラマの出迎えに感激しながら踏み入れた山小屋には「裂織ラグ」というもう一つの感動が待っていたのでした。 ‘裂織ラグ’発見! 手織りの2m×4mはあろうかという大きなラグ2枚。さらにベッドサイドには3枚の小さめのマットが目に飛び込んできました。それは8人も泊まれるという大広間の寝室と食堂との二部屋に、敷き詰められていました。そのしっかりと打ち込まれた大きなラグの印象は「圧巻の一言」。 聞けば、友人とその妹二人で15年前と10年前に2m幅の織機で織ったとか。子どもたちの服等家族中の衣服を掻き集めて織り込んだという説明通り、それらのラグに使用されている布は、綿、ウールのセーターや服、ニット地、タオルと実に種々様々。 しかしながら耳端は揃い、色調も美しく、彼女達のセンスの良さが伝わってくる力作です。 太い麻糸を経に筬密度は約cm1目。頓着無しで作ったらしい裂き糸の太さは2〜4cmと様々。そして経糸の見え隠れもお構いなし。そのせいか綾織のように見えるところもある―裂織の原点を彷彿とさせるその厚手のラグは長年多くの人たちに踏み込まれてなお、心地よく、ふわりとした感触が伝わってくるものでした。 真夏のアルプスといえども日中の太陽は肌を突き刺すように暑い!しかし日が沈むと気温はグンと下がり、今度は反対に非常に冷え込む。ここ山小屋では夏でも厚手のマットは必需品。家族の衣服を織り込んだ裂織マットは一家団欒の温もりと共にその役目を十分に果たし、存在をしっかりアピールしています。
山小屋を辞する時、ピース敷きのドアマットサイズは屋外でパタパタとはたいて日干しを。でも、敷き詰めたラグの手入れはどうするのだろう・・・ スイスでの裂織ラグは40〜50年前までは当たり前のように各家庭で織られていたが、日本同様、徐々に廃れていって今日では殆ど見られないとのこと。この山小屋ではウイーバーでもある友人の手で受け継がれており、生活の中に息づくラグをの当たりにすることができたことは大変うれしいできごとでした。 他に何軒かの家庭を訪ねましたが、手製のラグに出会うことはありませんでした。しかし1,2枚のピース敷きを見ることはできました。それは大量生産されたもので、あまり大きなサイズのものではありません。使用されている布は少し厚手の白っぽい綿の布が主流のようです。それを約3cm幅に裂いています。経糸は約20番手のレーヨン系の糸でcm5目位の平織り。織り上がりはあまりしっかりとはしていません。使用場所はキッチン、バスの水周りやベッドサイドの片隅ながらもしっかりと役立っている!?けれどもあまり気に留められることも少なく…といった印象でちょっと寂しい・・・ ベルギー、オーストリアでの旅では出会うことがありませんでしたが、イタリアのトリノ近郊のステイ先でも同様の裂織ラグがベッドサイドに! 同じ織元ではと思えるほどのスイスとの類似から、現在の欧州における標準的裂織マット事情、と映りました・・・ (染織作家 兵庫県 会員) |