全国裂織協会への期待
新たな扉を開く第一歩 富山 弘基
十年ほど前裂織に興味を抱かれた方々が、裂織という名称を持つ素朴で無垢な織りに魅せられ、裂織を伝承する各地を訪ねられた。そこには裂織を絶やすまいと懸命にひたむきに手機に向う織り人の姿があった。
数ある伝統織物の中で " 裂織 " は格別な存在であることは、その姿が語りかけるほど、庶民の心の感性から織りの形に昇華される感動を同行した方々は胸に刻んだ。その感動を一刻のものとせず、全国で活躍する裂織り人の作品を一堂にあつめてみたいと、人の輪を広げ、二00二年に東京で「公募展第一回全国裂織展」を実現された。その発展として、裂織文化の創造を目指す織り手と愛好者の交流と研修の広場をと、全国裂織研究会を発足させ、本年二月「公募展第二回全国裂織展」が企画され、成功を納めた。
このほど特許庁から「全国裂織協会」の名称が、商標登録として正式に認証されたことは、日本における裂織文化をよりいっそう振興させる役目を担う、責任と自覚が課せられたことだと私は理解したいと思う。 協会という名称は各分野に数え切れないほど存在するが、名称のみの有名無実のものから、活動のピークが過ぎて冬眠しているものもある。しかし、その多くは専門分野の中でそれぞれの目的にもとずいて、それを達成するべく活動している。
そうした中で全国裂織協会は、過去に活動の実績はあるとは言え、大局的に見れば呱呱の声をあげたばかりである。言わばこれからが本格的な活動期を迎える初々しい団体である。将来を展望すればなすべき事柄か尽きないほど、前途は広がり明るいと思われる。
裂織文化には生活工芸が伝統の礎になっているという原点をしっかり見据えておく必要がある。その基盤の上に立って伝統から今日的な楽しい裂織、少しは芸術的なもの、装飾美術など、織り人の感性を自由に生かした作品が誕生することは勿論歓迎である。
工芸は決して「無から有は生じない」という格言がある。全国裂織協会の発足は、次なる新たな扉を開く
創り出す喜びを今一度 中野 恵美子
この度、全国裂織研究会が「全国裂織協会」へと団体名を改称したという。全国裂織展の開催を始めとする一連の活動の実績のもとに、さながら幼虫からさなぎへと成長していくように会の存在も本格的になっていくようで喜ばしい。しかも単に名前の変更というばかりでなく、組織を再編成し、ますます会として充実させるべく基礎固めがすすめられている。頼もしい限りである。
布が貴重だった昔、僧侶は捨てられた弊衣を洗って縫い合わせて「糞掃衣」(ふんぞうえ)として着用したという。このように布を慈しむ心は古くからあるが、今日のもの余りの時代にあっても、我々は古着を前に単に捨てるにはしのびない、再利用の方法はないものかと思案をめぐらせる。再利用、再生の方法は色々あるであろう。その中でも裂織は最後まで布を有効に生かすよい方法の一つであり、そこから生まれる新たな織物の思いがけない表情に喜びをおぼえる。
我々はかつて着用した衣類を前に、それを着た時のことや、情景を思い出す。ことに母親に作ってもらったもの、お気に入りのもの等に愛着を覚えるが、このようなことは安直に入手したものでは少なかろう。また古布を手にしてその布の魅力に惹かれ、それを着用した人を、時代を、制作上の工夫、方法や関わった人々のことを思い、素材の背景にまで思いをはせる。そのことから先人の布作りの知恵や工夫を発見することもあろう。大量生産、大量消費という時代にあって、効率と消費のみではないそのようなゆっくりした時間をもつのもよいのではないか。ものを慈しむ心、生活のなかでものをつくり出す喜びを今一度大事にしたいものである。
そのような機会の提供、文化の育成という意味でも、全国裂織協会の役割は大きい。尚一層の発展を願ってやまない。 (東京造形大学教授)
◇全国裂織フェア2004
2004年8月31日(火)
主催:全国裂織協会
会場:きもの美術館 鈴乃屋ホール
〒110-8537東京都台東区上野1-20-11 鈴乃屋本店ビル7階
きもの美術館
◎ 11:00〜12:00 講 演 (担当:立川寛子)
「裂織、原点からオリジナリティへ」公文知洋子氏、
基本的な「平織」の技法を使って、糸や裂き糸づかいの工夫により、変化のある裂織布が表現できる。この、織りの創意工夫を重点的にお話しいただく。
・ 作品30点余りをきもの美術館に展示
・ 要予約、参加費500円・ 参加者募集→4頁を参照。
◎ 12:00〜12:30 裂 織 ショー(担当:伊藤弘子)
「装いの楽しみ」作家がモデルで登場、出品30点。
衣生活の中で裂織の持つ可能性を提案します。
♪白地、透かし織りのワンピースに帽子とバッグ
♪お気に入りのコートと帽子
♪私流「ぜんまい織」の帯。久しぶりに着物を着てみましょう。
等々、すでに意欲的な申込があります。魅力的な作品をお待ちしております。
・ 入場無料 ・ 出品作品募集中
鈴乃屋ホール
◎ 終日 ショッピングコーナー
(担当:阿部節子、吉岡靖)
全国の裂織作家、グループ35ブース出店、織機・裂織材料店もあります。総会終了後開店します。
ラウンジ
◎ 終日 ワークショップ
「裂織の風合いを織れる卓上機の提案」三上ムツ氏
問合せ先:全国裂織協会 〒185-0031東京都国分寺市富士本1-32-24
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